表皮の角化細胞は、さまざまな刺激や炎症性サイトカインによってIL-8を産生し、局所の皮膚炎の増悪を生じるが、皮膚炎に際し、浸潤する炎症細胞などが産生するセリンプロテアーゼは角化細胞のprotease-activated receptor 2(PAR2)の活性化を引き起こし、IL-8の産生やICAM-1の発現増加を介して炎症の増幅に関わると推測される。本年度は角化細胞におけるPAR2を介する炎症反応に及ぼすテトラサイクリン系抗生物質の影響を検討した。培養ヒト表皮角化細胞(NHEK)において、PAR2アゴニストペプチドで誘導されるIL-8産生は、5および10 μMのテトラサイクリン(TET)、ドキシサイクリン(DOX)、ミノサイクリン(MIN)で有意に抑制された。NHEKにアゴニストペプチドとともにTNF-αを作用させると、相乗的なIL-8産生増加がみられ、この効果はPAR2特異的siRNAのトランスフェクションにより有意に抑制された。またTNF-αとアゴニストペプチドによるIL-8産生増加は10μMのテトラサイクリン系抗生物質により有意に抑制されたが、DOXやMINに比較してTETの抑制効果は弱かった。IL-1βもTNF-αと同様にアゴニストペプチドの存在下にIL-8の相乗的な増加を引き起こすが、この相乗効果はDOXやMINで有意に抑制された。 以上の結果より、角化細胞のPAR2活性化はIL-1/TNF-αによるIL-8産生を増強することによって炎症反応の増悪に関与し、テトラサイクリン系抗生物質は角化細胞のセリンプロテアーゼーPAR2-IL-8 axisへの抑制作用を通じて皮膚炎の増悪を制御することが示唆された
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