皮膚炎に際し、浸潤する炎症細胞や角化細胞が産生するセリンプロテアーゼは角化細胞のプ7テアーゼ活性化受容体2(PAR2)の活性化を引き起こし、皮膚炎の増幅に関わると推測される。表皮ではPAR2の活性化は、恐らくはIL-8等の産生を介して、好中球の表皮内浸潤を促すと考えられる。昨年までにIL-1、TNF-αは活性化PAR2と協調してこれらのサイトカイン産生増強を生じることを明らかにした。本年度は好中球の表皮内浸潤を来す乾癬におけるPAR2の発現を検討した。抗PAR2抗体を用いた免疫組織化学では、PAR2は正常表皮ではほとんど顆粒層に局在し、弱く発現するだけであるが、乾癬表皮では肥厚した有棘層に広範囲に発現し、膿庖性乾癬表皮では、とりわけ膿庖の周囲に強く発現することが判明した。PAR2のアゴニストペプチドを角化細胞に作用させると、IL-8とともにIL-6の産生も誘導される。そこで、IL-6が膿庖性乾癬の病勢とどのように関係するのか、患者の同意を取得した上で、膿庖性乾癬治療前後におけるIL-6の血中濃度を測定した。その結果、血清IL-6値は膿庖性乾癬の治療開始とともに減少傾向が認められ、IL-6は膿庖性乾癬の病勢に関連して比較的早期に変動することが判明した。以上の結果から、乾癬表皮におけるPAR2発現増加は角化細胞が関わる皮膚炎の増幅を促進し、膿庖性乾癬ではIL-6などのサイトカインの産生増強、血中濃度の増加が疾患病態に関与する可能性が示唆された。
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