乾癬や膿疱性乾癬など、白血球が浸潤する皮膚疾患において、白血球や表皮細胞から産生されるセリンプロテアーゼはプロテアーゼ活性化受容体2(PAR2)の活性化を介してIL-8、IL-6等のサイトカイン産生を促し、皮膚炎の進展に関わると考えられる。これまで研究代表者はIL-1、TNF-αが活性化PAR2と協調してこれらのサイトカイン産生増強を生じることを明らかにしてきた。本年度は乾癬の病態に中心的な役割を果たすと考えられるIL-17に焦点を絞り、培養表皮角化細胞を用いてIL-17によって誘導されるIL-8、Gro-αの産生に及ぼすPAR2の役割を検討した。その結果、PAR2のアゴニストペプチドの存在下ではIL-17の作用は増強され、IL-8とGro-αの産生が強く誘導された。さらに、PAR2の活性化によって促進されるIL-17の作用はカルシニューリン阻害薬のシクロスポリンAで強く抑制されることが判明した。また、乾癬の治療薬として用いられている活性型ビタミンD3やコルチコステロイドによってGro-αの産生は有意に抑制されたが、その効果はシクロスポリンAに比較して軽度であり、一方これらの薬剤はIL-8に対してはほとんど効果を示さなかった。以上の結果から、表皮においてPAR2活性化はIL-17の炎症性サイトカイン産生誘発作用を増幅し、乾癬の治療薬として用いられるこれらの薬剤はこの炎症増幅メカニズムを異なるパスウエイで抑制し、臨床的な効果を示すことが示唆された。
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