炎症性反膚疾患であるアトピー性皮膚炎や尋常性乾癬などの病勢の評価、治僚効果の判定及び治療方法の選択は、皮膚科医の視診と抹消血中の白血球数およびCRPなどの非特異的炎症マーカーをもとに行われてきた。しかし、視診には個人差があり、従来の血液マーカーは疾患特異的ではないので、疾患特異的で臨床に応用できる新規マーカーの開発が望まれている。 本年度は昨年度に引き続き本学の倫理委員会で承認を受けた同意書に基づき、新たなアトピー性皮膚炎、尋常性乾癬の患者のインフォームドコンセントを得た後、末梢血を採取して全RNAを抽出した。この全RNAを昨年度と同様にヒトmRNAマイクロアレイチップをもちいて網羅的遺伝子解析をおこなった。その結果、アトピー性皮膚炎でケモカインであるCCL23、カルシウム結合蛋白質であるS100Pなどの血清中に分泌される分子や多数の転写因子の発現上昇が認められた。また、尋常性乾癬でもS100Pや多数の転写因子の発現上昇が認められた。マイクロアレイで得られたデータの数値の高低はやや再現性に乏しかったが、アトピー性皮膚炎における臨床評価システムであるSCORAD値や、尋常性乾癬におけるPASI値、非特異的炎症性マーカーであるCRP値との相関を統計処理にて検討して、まず上記のCCL23とSlOOPに注目した。 抽出した全RNAを鋳型にして、CCL23とS100Pに特異的なPCRプライマーでRT-PCRをおこない、CCL23とS100PのcDNAをクローニングした。これらのクローンを鋳型として、それぞれの遺伝子に特異的な配列部分を増幅したPCR産物を「誰でもアレイ」にスポッティングして選抜アレイを作成した。抽出した全RNAを鋳型にして、ビオチン化したcDNAを逆転写により生成し、選抜アレイにハイブリダイゼーションを行ったが、シグナルを検出することはできなかった。
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