強迫性障害は頻度が高く、繰り返しわき起こる不快な強迫観念とそれによって生ずる強い不安を打ち消すための強迫行動を特徴とした苦痛の大きい精神疾患である。行動療法、抗うつ薬による治療効果は限定的で、新しい作用機序に基づく治療が切望されている。近年の画像研究を踏まえ、本研究は強迫性障害病態におけるグルタミン酸神経系の関与を研究し、新しい創薬ターゲットとしての有用性を探ることにある。本年度は、グルタミン酸代謝関連機能的遺伝子変異の探索と解析を目的に、その対象遺伝子をグルタミン酸トランスポーターの中から、SLC1A1およびSLC1A3を選択した。一塩基置換(SNP)の有無を同定するため、サンプルとして、収集済みの健常者DNAサンプル32名分を用いた。ダイレクトシーケンシングにより、それぞれの遺伝子のプロモーター領域及び近傍から、マイナーアレル頻度10%以上のSNPをそれぞれより4つと5つを同定した。それぞれのSNPを対象に、現在健常者サンプル314名、千葉大学医学部付属病院精神神経科外来を受診した強迫性障害患者41名分のサンプルから抽出した血液よりDNAを抽出し、現在ダイレクトシーケンシングによりそれぞれの頻度を同定している。一部を終えたSLC1A1遺伝子のSNPでは、両者の間に頻度差は見いだせず、SLC1A3遺伝子のSNPでは2つのSNPで、遺伝子型に、1つのSNPでアレルの頻度に有意差を認めているが、全サンプルの解析は終えていない。いずれもこれまでの研究に無い成果である。また、一部の患者からは(30人)神経栄養因子BDNFを測定するための血清サンプルを採血により得ており、目標人数(50名)が集まったところで、性別と年齢をマッチさせた健常サンプルをコントロールに測定する予定である。
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