研究課題
プラセボとオキシトシン経鼻噴霧剤の投与順序が半々になるようランダム化し、クロスオーバーでダブルブラインドの臨床試験を行なった。IRBに承認された方法で募集した出来るだけ服薬歴の少ない成人で高機能の自閉症スペクトラム障害男性当事者7名を対象とした。他者の感情の理解などの課題遂行中のfunctional-MRI(f-MRI)上の脳活動変化を投与効果の評価指標とした。精神科医師が毎回投与前後にブラインドでの診察を行った。いずれの症例でも有害事象は認めなかったが、実薬を偽薬の回と比較すると、MRIの騒音への不快感の訴えや検査の長さへの苦痛や疲労の訴えが半数の例で著明に減少した。こうした例の中には、心理課題で提示される俳優の表情も全体に好意的に友好的に感じられたという訴えも認めた。f-MRIでは、俳優が幸福または恐怖の感情を演技する表情の映像を被験者に提示した。その際に、被験者にその表情を鑑賞する様に指示する条件(鑑賞)と俳優の表情を模倣して一緒に演技を行なう様に指示する条件(模倣)、および表情の一部分の表情筋の運動のみを指示する(運動)の条件を設定した。表情の模倣から運動の条件の差分を求めると、表情の模倣に要する表情筋の運動以外の脳活動成分が、上側頭溝や下前頭回後部および島皮質や扁桃体などの賦活として残った。類似の課題を用いた先行研究からこの成分は共感の成立に役立つと考えられている。今回、オキシトシン投与時にはプラセボ投与時に比べてこれらの脳部位のうち扁桃体以外では脳活動がより強くそして広範囲に拡大して認められた。一方で扁桃体については先行研究での表情刺激課題と同様に活動が低下していた。これらの結果から、オキシトシン投与が共感や他者の意図の理解を生み出す脳活動の賦活増強と関連することが示唆された。今後、更に対象を増やして結果を確定させる。
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