本研究では、主に特発性レム睡眠行動障害(RBD)患者の縦断的な追跡調査を行うことにより、パーキンソン病やレビー小体型認知症などを含むα-シヌクレイノパチーを発症する危険因子の同定をすることを目的としており、平成22年度も平成20年度、平成21年度に評価された特発性RBD患者の経過評価および対象者の追加を引き続き行い、α-シヌクレイノパチーへ進展する患者の背景因子を縦断的に明確化することをすすめた。特発性RBDの確定診断には、国際睡眠関連疾患診断分類第2版の特発性RBD診断基準を満たすこととし、これらを対象者とした。該当する対象者については、RBDスクリーニングスケール(RBDSQ日本語版)、認知機能検査としてMini-Mental State Examination(MMSE)、Clinical Dementia rating(CDR)、パーキンソニズム評価(UPDRS PartII及びPartIII)を行い別途器質的病巣の除外を目的に頭部MRI検査を施行した。上記基準を満たした対象者のα-シヌクレイノパチーへの進展は本期間中においては認められなかった。一方、以前よりRBDの診断がなされ、治療等介入を含め経過がみられていた者の中には、パーキンソン症状を呈する者が認められた。特発性RBDからα-シヌクレイノパチーへの進展を予測するearly makerないし関連要因の検討を行うことは、パーキンソン病等の病態の解明につながり早期介入・治療法を開発することにもつながり非常に重要である。対象者の蓄積と引き続きの縦断的な追跡調査を行うことが必要であるものと考えられた。
|