統合失調症死後脳前頭前野を用いたDNA chip解析の結果、統合失調症において発現の増加および減少が確認された遺伝子の中から、meta-analysisによって疾患関連領域と考えられている遺伝子座である8p、13q、22qのlocusに存在するいくつかの遺伝子に着目した。そして染色体8p21に位置し、細胞間接着や蛋白分解など多彩な機能に関与していると推測される遺伝子内に存在するアミノ酸置換を伴う一つの多型と統合失調症との間に有意な相関が確認できた。この結果を得たことから、この遺伝子に着目し、同遺伝子内に存在するその他の機能的と推測されるアミノ酸置換を伴う多型について上記血液サンプルを用いて相関解析を行い、この遺伝子と統合失調症との相関の可能性を検討した。上記の多型を含めて合計6箇所のアミノ酸置換を伴う多型について遺伝子多型解析を行った結果、統合失調症群と正常対照群で有意差が認められたのは上述の一箇所の多型のみであった。同様に同遺伝子のプロモータ領域に存在する多型についても同様の解析を行っているが、有意な相関を認めた多型は現在のところ同定されていない。 その他、統合失調症の神経生化学的な失調として、セロトニン神経系の生化学的な変化が報告されているが、その律速合成酵素であるtryptophan hydroxylase (TPH)について、神経系での優勢な発現が確認されているTPH2、およびTPH1についてもtag SNPを用いてハプロタイプ解析を行ったが、いずれの解析においても有意な関連は認められなかった。この結果については、「Common genetic variations in TPH1/TPH2_genes are not associated with schizophrenia in Japanese population.」として、Neurosci Lett誌に発表した。
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