ラット大脳皮質において、DISC-1がPSD分画に存在することを確認した。大脳皮質プライマリーカルチャーニューロンを28日間培養しスパインを形成したものを用い、抗体蛍光抗体法により二重染色したところ、DISC-1はKalirin、actin、PSD95と分布が一致するが、前シナプスのマーカーであるsynaptophysinとは完全に一致していなかった。このことも後シナプスにDISC-1が存在していることを示唆する。また、DISC-1結合蛋白でも、バーデー・ビードル症候群の疾患遺伝子BBS4はスパインに存在するのに対し、統合失調症の疾患候補遺伝子であるPericentriole materiall(PCM1)はスパインに存在していなかった。DISC-1 RNAiを用いてDISC-1の遺伝子発現を抑制するとスパインの形態、数が大きくなり、Kalirin強制発現と同じ形態となり、培養細胞と同じ結果となった。DISC-1結合蛋白は、他にもr-チュブリン、ダイニン、ダイナクチンなどがあるが、神経発達の段階における分布の変化が各蛋白で異なり、スパインに分布する蛋白も異なっていた。難治の統合失調症に効果があると言われているクロザピン(日本は平成21年度発売)は、従来の抗精神病薬であるハロペリドールと異なり、NMDA受容体機能に影響を及ぼすことが報告されている。ハロペリドールは後シナプスのマーカーであるPSD95を減らすのに対して、クロザピンは増やすことから、NMDA受容体機能に関係して、抗精神病薬がシナプスに及ぼす影響が異なる可能性が示唆された。今後、薬理学的検討を含め、各蛋白の発現をRNAiで抑制することで、統合失調症疾患候補遺伝子の神経発達における機能解析を、スパインにおける変化を中心として続けていく予定である。
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