研究概要 |
本研究では、気分障害の発症機序における選択的スプライシング機構の役割を深く探究することを目的とした。平成21年度は気分障害患者末梢白血球における主要な選択的スプライシング制御因子PTB遺伝子群(PTB, nPTB)および遺伝子発現制御因子HDAC遺伝子群(HDAC1-11)についての発現量を健常群と比較検討した。その結果、うつ状態の大うつ病性障害患者におけるnPTB遺伝子mRNA発現量は健常群に比し有意に低下していた。また、nPTBのターゲット遺伝子として、気分障害との関連が強く示唆されているBDNFの可能性を示す予備的実験データを得ている。さらに、HDAC発現解析を行った結果、大うつ病性障害患者うつ状態におけるHDAC2, -5mRNA発現量は健常群に比し有意に増加していた。また、双極性障害患者におけるHDAC4, -6mRNA量は健常者に比して有意に減少していた。 以上の結果から、気分障害患者におけるnPTBやHDACを介した選択的スプライシング異常・遺伝子発現制御異常の存在が示唆された。これは気分障害の発症機序の一端を担っている可能性があり、本研究結果の精神医学的意義は大きい。
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