研究概要 |
オペラント箱において,同時的複式物体弁別課題を習得させた.同時的複式物体弁別課題では,まず,オペラント箱の側面に設置された二つのパネル上に視覚刺激を提示した.ラットが正刺激の前におかれたレバーを押すと,二つのパネルの間にある報酬受け皿上に落とされる餌ペレットを得ることができた.負刺激を選択した場合,室内の明かりが10秒間消された.正刺激と負刺激が左右どちらに表示されるかは,試行毎にランダムとした.このように2対の視覚刺激についての弁別を,15秒の試行間間隔で1日1セッション,60分遂行させた.統制課題としては,視覚刺激の弁別を必要としないタッチパネルへの反応課題を用いた.嗅周皮質内への脳由来神経栄養因子(BDNF)のマイクロインジェクションを行った後,両課題を遂行させた.70%以上の正反応率を示した個体の脳を灌流固定し取り出し,免疫組織学的手法を用いc-Fos蛋白の発現量を嗅周皮質および海馬で検索した.その結果,海馬におけるc-Fos陽性細胞の発現数は,行動課題の遂行成績と相関せず,一方,嗅周皮質におけるc-Fos蛋白の発現数は,行動課題の遂行成績に相関する可能性が示唆された.現在例数を増やしてさらなる検討を行っているほか,BDNF以外の薬物投与の効果についても検討を続けている.
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