研究課題
近年、精神疾患患者におけるメタボリックシンドローム(Metabolic Syndrome : MS)罹患率の高さが問題となっているが、大規模な実態調査はほとんど行われていない。そこで、本年度は精神疾患患者を対象にMSの疫学調査と自律神経活動調査を行うとともに、また、患者群に食事・運動療法を行った結果をまとめた。1.初年度から行っている精神疾患患者におけるMSの疫学調査のまとめを行った。対象の統合失調症患者811名のMSの罹患率は20.6%であり、一般人口におけるMS頻度7.8%(Araiら(2005))より高頻度であった。また、男性入院患者のMS罹患率は15.3%に対して、男性外来患者では43.3%がMSの診断基準を満たし、女性入院患者の4.4%と比較して10倍の頻度であった。外来患者では不規則な生活習慣や社会的孤立による医療資源へのアクセス困難などが示唆されており(Newcomer 2007)、MSあるいは予備軍改善のための生活指導の必要性が、特に外来患者において急務であることが示唆された。今年度はこれらの結果を、国際学術論文として発表した。2.精神疾患患者における自律神経活動調査統合失調症患者174名と、健常成人32名を対象とし、心拍変動パワースペクトル解析により自律神経活動を定量化した。統合失調症群では対照群と比較して総自律神経活動(p=0.021)、交感神経活動(p=0.003)ともに有意に低下し、抗精神病薬の総投与量の関連が有意に示唆された。これらの結果を国際学会で報告をした。3.精神疾患患者への運動療法準急性期病棟に入院中の精神障害者を対象に、栄養・運動管理プログラムであるSolution for Wellness(大野ら,2004)と、定期的なウォーキング指導を1年間継続して行ったところ、統合失調症患者19名において、イスからの立ち上がり時間等、運動測定の結果が有意に改善した。これらの結果を国内外で学会発表した。
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Schizophrenia Research
巻: 123 ページ: 244-250