研究概要 |
統合失調症患者、健常対象において経頭蓋磁気刺激によるアセチルコリン、GABA系神経伝達の評価、脳血流測定、認知機能評価を行った。近赤外線分光法と認知機能課題を用いた統合失調症の前頭前野の賦活反応の評価につき学会発表を行った(正山, 他.第10回ヒト脳機能マッピング学会, 第38回臨床神経生理学学会)。疾患群での前頭葉機能の非効率化を認め、統合失調症の認知機能障害の生物学的基盤を示す結果と考えられた。また2連発経頭蓋磁気刺激法を用いた神経生理指標については、統合失調症の皮質内抑制にっき報告した。患者群では皮質内抑制の減弱を認め、統合失調症におけるGABA神経機能の減弱を示す所見と考えられた。これにより経頭蓋磁気刺激法は疾患の神経伝達機能の異常を反映し、疾患の生物学的指標となりうる可能性が示唆された(小瀬, 正山, 他.臨床脳波50, 731-735. 2008)。これらは統合失調症の認知機能障害の客観的生理指標としての利用が期待できる。現在、この手法を応用したshort latency afferent inhibition(SAI)によりアセチルコリン系神経伝達の評価を行っている。 また、抑肝散、加味温胆湯による治療を継続し、神経生理指標、認知機能の変化を検討している。平成20年度は抑肝散による皮質下認知症での精神症状、認知機能の改善例を経験した。抑肝散が認知機能、脳血流の改善効果を有する可能性を示す知見と考えられ、今後、結果を報告する予定である。
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