研究概要 |
本研究の要旨は統合失調症のアセチルコリン系神経障害仮説の解明と漢方製剤による認知機能障害の治療を客観的な神経生理指標によって行う点にあった。研究では統合失調症患者、健常対象において経頭蓋磁気刺激によるアセチルコリン系神経伝達の評価を行った。また、これに関連してGABA系神経伝達の評価、脳血流測定、認知機能評価を行った。経頭蓋磁気刺激手法を応用したshort latency afferent inhibition (SAI)では、アルツハイマー型認知症の鑑別診断などでの検討を行い、技術的な問題と診断上の有用性を確認した(正山,他.第10回和歌山認知症研究会,正山,他.臨床脳波51,767-772,2009)。その後の統合失調症群での検討では、統合失調症群では、SAI指標の低下を認め、統合失調症におけるアセチルコリン神経伝達の減弱、すなわちアセチルコリン神経障害仮説を示唆する知見が得られた。また近赤外線分光法と認知機能課題を用いた統合失調症の前頭前野の賦活反応の評価では、疾患群での前頭葉機能の機能低下、非効率化を認め、これらは統合失調症の認知機能障害の客観的生理指標となることが示された(正山,他,和歌山医学60 : 177,2009)。精神疾患の漢方薬の治療的利用については、抑肝散での統合失調症の認知機能、精神症状、錐体外路症状の改善例を集積した。同時に抑肝散による皮質下認知症での精神症状、認知機能の改善例を報告し、同製剤における認知機能障害の治療応用の可能性を示唆した(正山,他,精神医学,51 : 801-802,2009:精神神経学雑誌111 : 998,2009)
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