本研究課題の目的は神経伝達抑制機能を担う三量体Gタンパク質シグナル関連分子であるGRIN1遺伝子の動物モデルの作製および表現型解析を行うことにある。特に本研究を遂行するにあたって最も重要となるGRIN1ノックアウト(KO)マウスの作製については、コンディショナルKOマウスのgerm line transmissionに成功した。このマウスにおいては以前作製し、系統維持が困難であったsimple KOマウス(ヘテロ接合体)で観察された神経症状は認められておらず、loxP間で挟まれたGRIN1遺伝子が正常に発現していることが予想された。現在、余分な配列 (neomycin抵抗性遺伝子) あるいはGRIN1遺伝子を除去すべく、ユビキタスにCreリコンビナーゼを発現するCAG-Creトランスジェニックマウスと交配している。今後、これらの子孫からsimple KOマウス、lacZノックインマウスおよびコンディショナルKOマウスが作製される予定である。また、simple KOマウスの系統維持およびGRIN1過剰発現の効果を解析するために、GRIN1内在性プロモーター制御下にflagタグを付加したGRIN1遺伝子を発現するTgマウスを作製したところ、少なくとも1系統で内在性の数十倍の発現が認められた。このように、本研究の遂行に必要な動物モデルの作製に成功しており、来年度はsimple KOマウスの脳構築異常の詳細解析および成体期特異的GRIN1 KOマウスの作製に取り組む予定である。
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