本研究では、喫煙行動をタバコ(ニコチン)依存ととらえ、習慣性や依存に関与するとされる遺伝子に焦点をあて、喫煙行動と候補遺伝子の変異との関連を調べる。 具体的には、喫煙行動およびその候補遺伝子を次の3段階にとらえ、検討する。(1)最初にタバコに手を出すか否かに関係する遺伝子、(2)依存を成立させる遺伝子、(3)依存の解消に影響する遺伝子、の3段階である。この様な関連が明らかになれば、ニコチン依存形成のメカニズム解明や、一人ひとりの依存形成傾向を考慮に入れた、いわばオーダーメイドの効果的予防対策や禁煙指導といったものに役立つものと考えられる。 本研究の実施にあたり、当大学の倫理委員会にて、「タバコ(ニコチン)依存の分子遺伝学的研究」として承認を得た。その後、喫煙者、非喫煙者(禁煙成功者を含む)計約700名より書面にて同意をいただき、採血後にゲノムDNAを抽出した。現在、喫煙行動、特に新奇探索行動や依存形成に関連する遺伝子(ドーパミン神経系遺伝子、グルタミン酸受容体遺伝子、ニコチン性アセチルコリン受容体遺伝子、オピオイド受容体遺伝子等)について遺伝子解析を行っている最中であり、これら遺伝子の関連研究を今後も遂行していく予定である。 尚、研究代表者の研究グループは、カナダ、トロント大学医学部精神医学部門、嗜癖・精神衛生センター、精神科遺伝学部門との共同研究を行っている。当グループから先方へ留学者を出す、あるいは先方の研究者を招聘するなど、学術交流も盛んである。トロント大学医学部精神医学部門、嗜癖・精神衛生センターのJames L.Kennedy教授は精神遺伝学分野における世界的な第一人者であり、今後もカナダ・トロント大学と連携をとり、効率的に研究を遂行する予定である。
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