研究概要 |
本年度は、当初の計画に沿って以下の3点を解析して結果を得た: (1)FABP7遺伝子と双極性障害との関連研究 FABP7遺伝子を再シークエンスして新規SNPを1つ見出した。各SNPの頻度を考慮し合計16個のSNPでCase=864, Control=895例を解析したところ、3個のSNPで対立遺伝子および遺伝子型の関連を検出した。このことから、FABP7は統合失調症ばかりでなく双極性障害にも関与していることが判明した。 (2)FABP7遺伝子の双極性障害死後脳サンプルにおける発現解析 統合失調症と同じように、前頭前野で発現が上昇しており、かつ男性サンプルで有意であった。上記の結果と合わせて考えると、FABP7遺伝子は機能性精神疾患のうち特に男性患者の発生に影響していると推察された。 (3)FABP遺伝子ファミリーと機能性精神疾患(統合失調症および双極性障害)との関連研究 脳で発現が認められるFABP遺伝子は、FABP7の他にFABP5と3がある。FABP5にはデータベースに登録されているSNPがなかったため再シークエンス解析したが、頻度の低いSNPLか見つからなかったため遺伝解析は不可能であった。FABP3と統合失調症に関しては、個々のSNPではなくハプロタイプで有意な関連を検出した。FABP3と双極性障害に関しては、1つのSNPで男性のみに有意が認められた。 以上の今年度の結果をまとめると、脳で発現されているEABm伝子は、機能性精神疾患、それも特に男性に役割を持つことが示唆された。
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