研究概要 |
FABP(Fatty Acid Binding Proteinをコードしている)遺伝子はファミリーを形成しており、少なくとも19種類の遺伝子がアノテートされている。これら遺伝子の中で中枢神経系に発現しているものは、FABP7,5,3の3つである。本研究では、これら3つの遺伝子に焦点をあて、統合失調症および双極性障害との遺伝的関連について調べてきた。 これら3つの遺伝子について主にコモンSNPを選び、統合失調症および双極性障害との関連について調べてきたが、平成20年度に結果を得たので、平成21年度はこの研究結果について論文化を行った(Iwayama et al. Am J Med Genet PartB, in press)。 また、平成21年度は、FABP7,5,3の3つの遺伝子につき、疾患群285例について全エクソンおよびそれら近傍のイントロンをすべてシークエンスし、頻度の稀な遺伝子多型を探索した。検出された多型については、1,060例の統合失調症群と同数例の対照群を用いて確認を行った。これらの結果、疾患群に特異的な多型として、FABP5遺伝子上にGly114Argの新規多型を発見した。そして、それをss160853732としてGenBankに登録した。また、すでに報告はあったもののFABP3遺伝子上にAsp3Glyという稀なミスセンス変異を日本人サンプルでも同定した。この多型については、結晶構造データベースに基づいた解析をしたところ、機能変化をもたらす可能性が示唆された(Maekawa, Iwayama et al. J Hum Genet in press)。今回見つかった多型、特にFABP3遺伝子上のAsp3Glyミスセンス変異がどのような表現型に関連しているか、非常に興味が持たれるところであったが、頻度が稀であったため疾患に対する有意な関連は見いだせなかった。
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