本年度は新たにナルコレプシーに関連する可能性のある遺伝子として同定されたNR6A1に関してそれがナルコレプシーの原因遺伝子であるオレキシンの転写制御に関与するか否かを検討した。 1) マウス視床下部切片を用いた2重免疫染色をおこないオレキシン神経細胞の核内にNR6A1のシグナルを認めた。しかしながら、すべてではないがオレキシン以外の視床下部神経細胞においてもシグナルが認められた。 2) 培養細胞を用いたルシフェラーゼレポーターアッセイをおこないオレキシンプロモーター領域に対してNR6A1が働くことを示した。またその作用はオレキシンプロモーター領域に含まれるNurRE配列を介することが示唆された。 3) 実際にNR6A1がNurRE配列に結合することを示すためクロマチン免疫沈降をおこないNR6A1がNurRE配列に結合していることを示した。 4) オレキシン自体が日内変動を示すため、それを制御する可能性のあるNr6a1もまた日内変動を示すと考え、ラットを2時間おきにサンプリングし視床下部でのNr6a1の日内変動を検討した。しかしながら24時間でのNr6alの有意な変動は観察されなかった。 5) 生体内でのNr6a1のオレキシン制御への関与を確認するため、子宮内電気穿孔法を用いNr6a1を胎児期14日目の視床下部へ導入し過剰発現させた。生後にサンプリングをおこなった結果、Nr6a1によりオレキシン神経細胞数自体に変化は生じないがオレキシン遺伝子量の減少が観察された。ただし、検討数が少ないため今後の検討が必要である。
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