年齢相応の脳発達を明らかにするために、健常な小児被験者の脳MRI、及び種々の生活習慣、認知力のデータを収集した。最終的な撮像予定人数は300人であり、平成21年3月末現在、ほぼ予定通りのペースで、169人の撮像を終了している。得られた脳MR画像に対し、頭蓋内体積を灰白質体積で割ることで各個人のgray matter ratio(GMR)を得た。更に、脳局所の灰白質量、白質量等を求めるために、voxel-based morphometryの手法を用いて計算した。 その結果、6歳〜18歳の健常日本人小児において、灰白質体積は年齢と有意な逆U字型の相関が見られ、体積のピークは10〜12歳に見られた。一方、GMRは年齢と有意な負の相関が見られた。更に、全脳白質体積は年齢と有意な正の相関が見られた。更に、局所灰白質体積と年齢との相関に関しては、両側中心前回、両側、特に左側下前頭回が年齢と有意な正の相関を、前頭眼窩部が有意な負の相関を呈した。更に、皮質脊髄路の白質体積と年齢が有意な正の相関を呈した。 これらの結果から、脳の発達性変化は部位、年齢によって異なっている可能性が示唆された。本研究は未だ遂行途中であるものの、既に非常に興味深い結果が得られている。これらの結果から年齢相応の脳発達が明らかになると共に、発達障害などの種々の脳形態に異常を来す疾患との鑑別、早期診断等に本データが有用であると考えられる。更に、脳の各領域の発達時期が明らかになることで、種々の学習の習得には発達のどの時期がよいかと言った疑問にも重要な根拠を与える可能性が示唆される。
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