年齢相応の脳発達を明らかにするために、健常な小児被験者の脳MRI、及び種々の生活習慣、認知力のデータを引き続き収集し、最終的な撮像予定人数である300人の撮像を終了した。得られた脳MR画像に対し、頭蓋内体積を灰白質体積で割ることで各個人のgray matter ratio(GMR)を得た。更に、脳局所の灰白質量、白質量等を求めるために、voxel-based morphometryの手法を用いて計算した。 その結果、6歳~18歳の健常日本人小児において、昨年度の予備的な解析で見られた以下の結果が、全被験者データにおいて有意に見られた。その結果はまず第一に、灰白質体積は年齢と有意な逆U字型の相関が見られ、体積のピークは10~12歳に見られた。第二に、GMRは年齢と有意な負の相関が見られた。第三に、全脳白質体積は年齢と有意な正の相関が見られた。第四に、局所灰白質体積と年齢との相関に関しては、両側中心前回、両側、特に左側下前頭回が年齢と有意な正の相関を、前頭眼窩部が有意な負の相関を呈した。更に、皮質脊髄路の白質体積と年齢が有意な正の相関を呈した。 これらの結果から、健常小児において、脳の発達性変化は部位、年齢によって異なっていることが明らかになった。更に、日本人健常小児における、年齢相応の脳発達を灰白質、白質体積から明らかにした。これらのデータは、発達障害などの種々の脳形態に異常を来す疾患との鑑別、早期診断等に有用であると考えられる。更に、健常な脳発達のメカニズムを明らかにする上で重要な示唆を与えられると考えられる。
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