年齢相応の脳発達を明らかにするために、昨年度まで収集した300人の健常な小児被験者の脳MRI、及び種々の生活習慣、認知力のデータを解析した。脳画像解析は、得られた脳MR画像に対し、頭蓋内体積を灰白質体積で割ることで各個人のgray matter ratio (GMR)を得た。更に、脳局所の灰白質量、白質量等を求めるために、voxel-based morphometryの手法を用いて計算した。 その結果、複数の新知見が得られた。第一点目として、脳灰白質量で補正した脳血流量は、発達と共に一度増加し、その後減少するが、そのタイミングが脳の部位によって異なっていることを明らかにした。具体的には、比較的早期に発達すると考えられていた一次野は早い時期に血流量のピークを迎え、高次野は発達の後期に血流量のピークを迎えることが明らかになった。第二点目として、朝食習慣の差が、脳形態、認知力に影響を与えることを明らかにした。具体的には主食がご飯の群は、主食がパンの群より有意に灰白質量が多く、認知力も高かった。この理由としては、主食のグリセミックインデックスの差や、食事中の脂質量等が影響していると考えられる。 これらの結果から、健常小児において、脳の発達性変化は部位、年齢によって異なっていることが明らかになった。更に、生活習慣の差が脳発達、認知力発達に影響を与えることを明らかにした。これらのデータは、発達障害などの種々の脳形態に異常を来す疾患との鑑別、早期診断等に有用であると考えられる。更に、健常な脳発達のメカニズムを明らかにする上で重要な示唆を与えられると考えられる。
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