近年の機器の発達により寿命の短いフリーラジカルを間接的に定量することが可能になった。これにより、放射線により生じるフリーラジカルや活性酸素を間接的に計測することが可能になった。日常医療・がん治療に於いて用いられる放射線の影響がフリーラジカル・酸化ストレス計測装置で計測可能かどうかを実験動物のラットを用いて検証した。ラットに放射線を照射して3日後に血中酸化ストレス値は2Gy照射群において有意に上昇し、対照群と30Gy照射群では上昇は軽度であった。7日後ではどの群も有意差が無かったが、今回の照射実験で放射線照射後は酸化ストレス値が有意に上昇することが示された。この解析結果により、酸化反応物の簡易的測定機器でも放射線による酸化ストレスの影響を捕捉・数値化して評価できる可能性が高いことがこの分野に於いて初めて示された。 続いて我々は皮膚反応と酸化ストレス値の関連性の解析を行った。この結果、照射線量と皮膚反応は明らかに相関したが、障害の程度に応じて血中酸化ストレス値も上昇していた。ラットの皮膚に対する放射線照射ではその皮膚反応が脱毛といった軽度なものから潰瘍のような高度なものになるほど酸化ストレス値も高値を示した。今後はヒトにおける放射線障害をこの手法を用いて定量化・計測することが可能かもしれない。この結果はこれまでに報告されていない結果であり、我々は2つの実験結果を2編の原著研究論文として学術雑誌に掲載した。
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