研究概要 |
1) 炭素イオン線の、未熟な脳神経細胞に対する殺細胞効果は、アポトーシスを指標とした場合、X線の約10倍大きかった。 2) グリア細胞は、細胞の成熟度によるX線に対する感受性の差はほとんどなく、神経細胞と比べると、ややX線感受性は低かった。 3) ヌードマウス皮下移植腫瘍においては、テモダール(TMZ)併用時の、炭素イオン線のX線に対する生物学的効果比(RBE)は約3であり、TMZ非併用時とほぼ同等であった。また、TMZの併用効果は、相加効果であった。マウス脳内移植モデルにおいて、X線照射時では、TMZ併用により1.6倍の腫瘍縮小効果が認められた。また、TMZにさらにGYKI52466を併用することで、約10%の腫瘍縮小効果増強が認められた。腫瘍細胞の遊走については、X線単独で増強したが、TMZもしくはGYKI52466を併用することで完全に抑制された。 4) ヒトでの通常の使用量(体重あたり)のTMZ併用時には、非併用時に比べ、明らかな炭素イオン線の効果増強作用は認められなかった。 5) X線照射によりAkt, PDK1の発現増強が認められ、また、PDK1の発現増強は脳腫瘍細胞の遊走能増加と関連し、臨床検体における活性型Akt・PDK1発現の増強は、神経膠芽腫患者における予後不良因子であった。
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