呼吸性移動を伴う肺に対する放射線・粒子線治療の高精度化を目指して、CT画像を用いた肺の動態定量化技術の開発を進めるとともに、本学で開始予定である重粒子線治療における肺の呼吸同期照射に関して、高精度化を実現するための検証を行った。特に、重粒子線治療計画における、エラーやマージンの定量化、それを補償するための治療計画での対応方法を検討し、ファントムを用いたビーム試験によりその妥当性を確認した。 まず、同期照射中の実際の動きの位置を把握するために、呼吸波形を得る体表面の動きと呼吸波形やゲート信号のタイミング、X線CT、ビーム同期のタイミングの関係を調べた。その結果、体表面の動きと同期CT撮影のタイミングのずれが、無視できないほど大きいことがわかった。このタイミングの遅延を考慮して同期CT及び4DCT撮影を行い、ビーム照射時のゲートレベルや最呼期と予想される位相での3DCT画像を再構成し、同期CT(計画用基準画像)と各位相の画像を比較することにより、照射中の臓器の動きを定量化した。その定量化結果より各方向のマージンを決定し、治療計画を行った。動きのマージンに対しては、粒子線の飛程を患者毎に調節する補償フィルタの加工によって対応する。この方法により動くファントムを用いた治療計画を行い、4DCT画像の各位相における線量分布にて標的がカバーされていることを確認し、実際に重粒子線を照射してフィルムを用いて照射野を確認したところ、ほぼ計画通りの照射野が形成されることがわかった。 以上より、実際の重粒子線呼吸同期治療において、上記方法により確実かつ高精度な治療が可能となることが明らかとなった。
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