ラジオアイソトープ(RI)標識抗体フラグメント・ペプチドを用いたがんのアイソトープ治療では、腎臓での非特異的な放射能集積による副作用が問題となる。本研究では、申請者が以前示した戦略(腎臓の刷子縁膜酵素で認識されるペプチド配列を含有するRI標識試薬を用いて標識し、腎臓に取り込まれる前に尿排泄性の放射性代謝物を遊離させることにより、腎放射能レベルを低減する戦略)を応用し、^<90>Y-DOTA-octreotideをモデルとして、RI標識ペプチドの腎放射能レベルの低減法を開発することを目的とする。 まず、尿排泄性代謝物として適する放射性化合物を見出すため、設計、合成、評価を行った。その結果、腎臓への集積性が低いと考えられる化合物を見出すことに成功した。 ついで、その化合物を腎臓刷子縁膜酵素の作用により遊離しやすいペプチド配列を探すため、その化合物と種々の保護ペプチドとが結合したモデル化合物を合成し、腎臓刷子縁膜小胞を用いて、その評価を行った。その結果、腎臓刷子縁膜酵素によって認識されやすい配列を見出した。 今年度、上記のものと同様の検討を継続するとともに、上記の結果あるいは今年度の結果に基づいて新規RI標識octreotide誘導体を設計、合成、評価することにより、新しい腎放射能レベルの低減法を開発することが可能と考えられる。したがって、本研究成果は、難治性のがんの治療に新しい可能性を与えるものと考えられる。
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