MRIを用いた健常人における脳容積と老化の関係に対するこれまでの研究手法は、直線、もしくは2次曲線などで近似して結果を分析している。サンプル数が少ない統計解析では、このような手法で結果を分析するしかなかった。しかし、我々は、膨大なサンプル数、3.0テスラ高空間分解能画像を用いて統計力を増すことで、今まで統計学的に証明できなかった脳容積変化を分析することができると考えた。そこで、40歳代から70歳代の男女における、約1400例の健常人からMRI-T1強調画像を取得し、脳容積のデータベース化を行った。その後、閉経と脳容積との因果関係をVBMにより分析したところ、他のグループ間での変化量に比較し、40歳代女性と50歳代女性のグループ間の変化量が大きく、閉経時期と関連した海馬萎縮を示唆することができた。その他の領域(前頭葉、側頭葉、小脳など)における関連性は認められなかった。3.0テスラ高空間分解能画像による、膨大な健常人画像を利用し、年代ごとにグループ分けした、これまで例がない解析手法を採用したことによりこの現象を明らかにできたと考えている。閉経と関連の深いエストロゲンと脳容積・機能に関する論文は報告されているが、閉経との関連を示唆したのは我々の報告が初めてと思われる。エストロゲンに関連した脳神経保護作用、アルツハイマー型認知症などの論文は数多く報告されているが、その関連性については議論の余地が残されているのが現状である。我々が行った研究により、この関連性を明らかにするための情報が一つ加えられたと考える。
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