将来の臨床応用が期待される細胞や遺伝子の導入を用いた再生医療や癌免疫療法・遺伝子治療における有効な生体内細胞導入法の開発を目指し、本研究課題では肝癌に対する樹状細胞療法における生体への樹状細胞導入法を用いて研究する。従来の皮下注入、経静脈的注入、局所注入と異なる経動脈的(あるいは経門脈的)注入に種々のインターベンショナルラジオロジー技術を組み合わせた細胞導入法について、生体内での導入細胞の動態を巨視的および微視的(標的細胞との関わりを含めて)に明らかにする。それにより導入細胞の標的組織へ集積率を向上させ、かつそこで有効に機能させられる新しい細胞導入法の開発を行うことを目的とする。 血管造影手技を用いた実験の遂行のため、家兎での樹状細胞の精製・培養、細胞標識を行必要がある。そのため、樹状細胞の精製ならびに培養のための条件検討を行っている。また、同時に生体顕微鏡にて肝内の血流状態を観察、記録する必要があるため、その条件検討もおこなっている。これらが確立したところで、今後、正常家兎を用いた生体顕微鏡観察により、肝血流動態の解析、樹状細胞の動脈内注入および門脈内注入時の動態解析を行う予定である。 また、同時に臨床的にも多発性肝細胞癌を有する患者に対して、末梢血より単離・培養された樹状細胞を動注によって導入する治療を行っている。血管造影の手法を用いて肝癌の栄養動脈に選択的にマイクロカテーテルを挿入し、まず、リピオドールによる塞栓を施行して末梢流出路をブロックした後、樹状細胞を同じく肝癌の栄養動脈より注入し、ゼラチンスポンジ細片で塞栓することにより、肝癌への選択的な樹状細胞注入とともに血流のブロックを行う方法である。樹状細胞注入手技に際して合併症の発生は認めず、術後にも特に合併症の発生は認めていない。
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