研究概要 |
内用放射療法に使われている主な放射線はβ線であり、放出核種としては^<90>Y,^<131>Iや^<111>Inなどが用いられているがα線放出核種もα線が持つ物理的特性から近年その有用性が注目されている。本研究では播種性の高い癌としてリンパ腫や白血病、腹腔播種モデルの大腸がんを対象にし、α線放出核種の転移性骨腫瘍以外の悪性腫瘍に対する内用放射療法への適応を目指す。国内に於いて入手可能なα線放出核種には^<227>Th, ^<223>Ra, ^<225>Ac, ^<213>Biがあるが、臨床展開を目指した場合定常的な供給が不可欠であるため、本研究では加速器を用いることで生産可能な新規α線放出核種^<226>Thに着目し、この核種の製造を行い定常的供給の可能性も併せて検討する。検討予定のα線放出核種の製造には加速器(サイクロトロン)が必要である。しかし研究者所属の大学には14MeV以上に陽子を加速できるサイクロトロンがないため、他大学や他研究施設の所有する加速器の利用可能性を検討した。まず他大学等で^<226>Thを作るために必要な陽子の加速エネルギーを有するものは国内で少なくとも3施設は存在することが判明した。そのうち大阪大学核物理センターAVFサイクロトロンでは実際に核燃料物質^<232>Thの酸化物ThO_2をターゲットとして準備し陽子線照射による^<230>Paの製造に成功した。また^<230>Paから壊変して生成する^<226>Thもγ線スペクトロメトリーによって確認された。今後はThO_2ターゲットからの効率的な放射化学分離及び^<226>Thの持つ殺細胞効果をin vitroで検証する予定である。
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