研究概要 |
本研究は, 重篤な脳梗塞の予防を目的とした脳MR画像におけるラクナ梗塞のためのコンピュータ支援診断(Computer-Aided Diagnosis : 以下, CAD)に関する基礎研究である. 無症候性のラクナ梗塞は, 脳ドックでしばしば発見される. ラクナ梗塞の存在は, その後に起り得る重篤な脳梗塞との関係が示唆されているため, その検出は重要である. しかし, ラクナ梗塞は血管周囲腔拡大との鑑別が困難であるとの理由から, すべてのラクナ梗塞を正確に検出することは困難である. そこで本研究では, ます, ラクナ梗塞と血管周囲腔拡大の鑑別を支援するCADシステムの開発を行った. 52人の脳MR画像(T1強調画像及びT2強調画像)からなるデータベースを構築し, これらに含まれる89か所のラクナ梗塞と20か所の血管周囲腔拡大の位置を, 2名の神経放射線科医のコンセンサスによって決定した. 次に, これらの陰影の特徴を客観的数値で示す技術, 及びラクナ梗塞の可能性を数値情報で提示する技術を開発した. まず, トップハット変換をT2強調画像に適用することによって陰影を強調したのち, 閾値処理によつて陰影の領域を抽出した. 次に, 抽出した陰影から大きさ, 形, 位置, T1強調画像及びT2強調画像の信号値に関する画像特徴量を計測し, それらを入力としたニューラルネットワークによって, ラクナ梗塞と血管周囲腔拡大を鑑別した. 本手法をROC(Receiver Operating Characteristic)解析を用いて評価したところ, ROC曲線以下の面積が0.893の結果を得た.
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