本研究の目的は難治がんの一つである膵癌に対し分子標的薬剤を併用することによって放射線治療の増感を目指すことである。特に光イメージング技術を用いることにより、治療効果の評価だけでなく、低酸素に注目した腫瘍内環境の治療に伴う変化の評価も同時に行っている。本年度は膵癌細胞にルシフェラーゼ遺伝子および低酸素誘導性のルシフェラーゼ遺伝子を導入し、マウス膵癌同所移植モデルでの腫瘍の増殖、進展パターンを、IVIS(○!R)Imaging Systemを用いた経時的な光イメージングにて確認した。臨床と同様に膵癌同所移植モデルでは腫瘍は局所での増殖の後、腹腔内に播種することを明らかにした。また、皮下腫瘍モデルに対して放射線治療や抗がん剤治療、また血管内皮細胞増殖因子阻害剤による治療を行い、HIF-1活性の光イメージングでみる腫瘍内低酸素を評価すると、抗がん剤治療、また血管内皮細胞増殖因子阻害剤にて腫瘍内低酸素が大きく変動することを明らかにした。またHIF-1活性が高いと血管内皮細胞の放射線抵抗性を増強することによって放射線治療の効果を低減することを明らかにし、この結果からHIF-1活性の光イメージングが放射線治療と分子標的薬剤の最大治療効果を得るための併用タイミングを知るために有用であることが示唆された。この皮下腫瘍モデルでの結果も参照しながらマウスの膵癌同所移植モデルに対する放射線治療の手法について検討を開始し、血管内皮増殖因子阻害剤と放射線治療併用のスケジュールや放射線線量や投与スケジュールの最適化を目指した実験を開始した。
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