2008年度はリチウム-ピロカルピン(Li-P)てんかんモデルラットにおける^<14>C-酢酸・^<14>C-IMP・^<14>C-DGの取込みを検討した。さらにケトン体の一種であるメチルエチルケトン(MEK)によるてんかん抑制作用について検討を行った。また、幼弱動物におけるてんかん発作時の脳循環代謝およびグリア代謝を検討する目的で、3週齢のラットにおけるLi-Pモデルを確立し、各放射薬剤の取り込みに関する検討を行った。 Li-Pモデルラットにおいて、ピロカルピン投与30分後よりstatus epilepsy (SE)が生じ、数時間に渡り激しい発作が間歇的に続いた。^<14>C-酢酸の取込みはSE初期には全く変化せず、最も激しくSEが生じたピロカルピン投与2時間後において200%まで増加し、24時間後にはコントロールレベルまで回復することが明らかとなった。さらに、ピロカルピン投与2時間後における^<14>C-IMP、^<14>C-DGの取込みも増加したが、^<14>C-DGのみ橋-延髄領域は変化しない等、トレーサにより領域による差異が認められた。 さらにMEK前処置によりSEが抑制されることが明らかとなった。^<14>C-酢酸、^<14>C-IMP、^<14>C-DGの取込み増加もMEKにより抑制された。このようにケトン体によるてんかん抑制作用は脳の循環代謝と関連しており、MEKの作用機序の解明により新たな治療薬の可能性が示された。 幼弱ラットにおいてはLi-PによるSEの感受性は8週齢と比較し、非常に高いことが判明した。SE中の幼弱ラットのトレーサの取込みは^<14>C-IMP、^<14>C-DGについては8週齢と同様に増加したが、^<14>C-酢酸は変化せず、幼弱ラットと成熟ラットにおいてはてんかん発作時のグリア代謝が異なっていることが明らかとなった。これより小児と成人におけるてんかん発作およびその後の病態の差異にグリアが関連している可能性が示された。
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