幼弱ラット(3週齢)のてんかんモデルを作成し、脳エネルギー代謝に関する検討を行った。モデルにはリチウムーピロカルピン(Li-P)てんかんモデルを用いた。 これまでの検討では^<14>C-酢酸の取込みはトレーサ投与5分後の一時点でのみの検討であった。しかし、代謝速度の変化が生じており、一定点での測定では変化を捉えきれていない可能性もあることから、今年度は経時的な取込みを検討した。その結果、^<14>C-酢酸の取込みはいずれの測定ポイントにおいても取込みはコントロール群と有意な差は認められなかった。また、幼弱ラットにおける^<14>C-酢酸取込みの基質濃度依存性を検討したところ、成熟ラットでは基質濃度が増加するにつれ顕著に取込みが亢進したのに対し、幼弱ラットでは亢進の割合が非常に低いことが明らかとなった。 さらに、^<14>C-乳酸の取込みも検討を加えた。^<14>C-乳酸はモノカルボン酸の一種で、幼弱期にはより高い割合で脳のエネルギー基質として利用されることが報告されている。成熟ラットではLi-P群は^<14>C-乳酸の取込みは非常に高値を示した。一方、幼弱ラットではてんかん発作が生じていても^<14>C-乳酸の取込みは^<14>C-酢酸と同様に変化しなかった。 幼弱ラットではてんかん時に糖の代謝は増加するが、モノカルボン酸(酢酸・乳酸)の代謝は変化しないことが明らかとなった。正常時においても幼弱ラットの脳ではモノカルボン酸がエネルギー産生に寄与する割合が大きいため、それ以上の亢進ができないことが考えられる。さらに成熟ラット脳においても、グルコースの酸化的代謝(好気的代謝)については正常時で既に飽和していると推定されており、てんかん時にみられる^<14>C-DG(糖代謝トレーサ)の増加は嫌気的代謝過程である解糖のみを反映していると推定された。
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