今年度はこれまで主に用いてきた側頭葉てんかんモデルであるリチウム-ピロカルピンてんかんモデルラットに加え、他の薬物誘発性、電気刺激誘発性のモデルにおける脳内のエネルギー代謝と行動科学的所見についての関連を検討した。さらにアセトンと同様に抗けいれん作用を示したメチルエチルケトン(MEK)およびジエチルケトン(DEK)の種々のけいれんモデルに対する作用についても検討を加えた。 マウスに薬物誘発性(ペンチレンテトラゾール、カイニン酸)、および電気刺激誘発性のけいれんを生じさせMEK、DEK投与の影響を検討したところ、両化合物は検討を加えたすべての急性期けいれんモデルに対し有意に発作の発現を抑制することが明らかとなった。またペンチレンテトラゾールによるキンドリング発現に対する影響をマウスを用いて検討したところ、MEKもしくはDEKをペンチレンテトラゾール処置前に投与した群ではキンドリングの発現を有意に抑制することが明らかとなった。さらにキンドリング群では^14C-デオキシグルコース(DG)の取り込みが有意に低下(60%)していたが、MEKを投与した群では^<14>C-DGの取り込みはコントロール群と同程度まで回復していた。このことからてんかん形成期の脳のエネルギー代謝の変化にMEKなどのケトン体が影響を与えていることが明らかとなった。 またリチウム-ピロカルピンてんかんモデルラットにおける^<14>C_アセトンの体内動態についての検討を行った。^<14>C-アセトンは8週齢の正常ラットにおいて投与120分後において約0.15%dose/g tissue取り込まれた。しかしながらリチウム-ピロカルピンてんかんモデルラットとの有意な取り込みの差は認められなかった。
|