本研究は、金属との結合が非常に速い八臭素化ポルフィリン誘導体に着目し、新規「放射性金属-八臭素化ポルフィリン錯体」を開発し、腫瘍の放射性医薬品としての新たな可能性を開拓することを目的としている。八臭素化ポルフィリン誘導体としては、正電荷を持つ八臭素化ポルフィリンとして、Octabromotetrakis(N-methylpyridinium-4-yl)porphine (OBTMPyP)を、負電荷を持つ八臭素化ポルフィリンとしてOctabromotetrakis(4-carboxyphenyl)porphine (OBTCPP)を合成した。昨年度は、OBTMPyP、OBTCPPともに、非放射性のIn、Zn、Mn、CoやCuと、中性付近のpHで、常温で速やかに錯体を形成することを見出した。本年度はこれらの化合物について、放射性金属を用いた検討を行った。^<111>In、^<67>Ga、^<65>Znを用いて常温で放射性金属錯体の合成を試みたところ、^<111>In、^<67>Gaに関しては、OBTMPyP、OBTCPPともに、十分な比放射能を持つ標識体を得ることはできなかった。この原因として、放射性金属を用いた反応は、トレーサー量での反応であり、非放射性のInを用いた検討とは異なり、十分な量の金属が存在しないため、錯体生成反応が進みにくかった可能性が考えられる。一方、^<65>Znは、OBTCPPと常温で速やかに錯体を形成した。これらの結果は、トレーサー量での反応においては、金属によって錯体形成反応に差があることを示している。今後、各金属核種ごとに至適標識反応条件の検討が必要と考えられる。
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