本年度は、当初予定していた金属・非金属を含む組織が位相情報のどのように影響するかという検討を行う予定であったが、臨床で試みに使用していた共同研究者より、従来見えていなかった脳幹部の中心とする神経東組織群が明瞭に描出される報告を受けて臨床を中心とする研究に移ることとした。具体的には、従来法である磁化率強調画像化法(SWI)に比べ、見えるものと見えないものがあるのかという点のほかに、本手法の特徴である柔軟な強調パラメタの調整ができるという点を生かし、より明瞭にコントラストをつけることが可能なパラメタの確定を検討することにした。この研究の結果、位相ノイズの低減を図りつつ、高コントラストな脳幹部組織描出を可能にした。また、この描出技術によって、従来判定が難しかった多系統委縮症(MSA)やシャイ・ドレーガー症候群(SDS)なども画像確定診断が可能なレベルであると考えられるにいたった。また同時にこれらはSWIでは描出できず、本研究で得られた大きな成果である。さらに、アミロイド-βに起因すると考えられる老人斑などの微小組織病変も、開発当初より、位相を用いることによって鋭敏にとらえることができると考えられたため、理化学研究所と共同研究によって検出可能かの初期検討を行った。この結果、7TMRIでT2*強調画像でとらえられたと報告されたレベルの老人斑を、3T診療機(実験機として稼働)で検出ができたと考えられる十分な信号を得られた。この結果は、現在解析中であり、次年度のさらなる検討にて結果を報告する予定である。 最後に、本年度は前年度申請が完了した国内特許のほかに、国際特許の申請を行い、国際的な権利化を確実にするよう努力した。
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