本年度は、主に本研究課題で開発された位相差強調画像化法(PADRE)の形態画像作成の応用としての、アミロイドβ老人斑(AP)を描出するための技術開発を主に行ったために、当初計画していた機能画像の作成を断念せざるを得なかった。しかしながら、3T上でのAPの観測成功や位相分布の特定など、その成果は非常に大きく、国際学会での発表をすぐに行った。また、並行して行ったPADREの医療実機上での稼働に向けた開発は順調に行われ、最終年度にしてwork in progress版として現段階で分かっているだけで、世界中で約30か所以上の医療機関で臨床評価が行われており、すでに多くの病変が先行技術であるSWIをしのぐ高分解能・高精度で観測されたことが報告され始め、本研究課題の主な目的を達成しただけでなく、目的を大幅に超える成果を得たものと確信している。撮像に際しては、予め撮像パラメタの最適化を行い、高分解能撮像を約3分未満で行うことも可能にするなど、本研究で培った成果を集約した結果を提示することができた。さらに、当初の目標を超えて新しく撮像時間の短縮を目的として、phase wrapを抑える撮像法として短TE撮像データを用いて長いTE下での撮像データと同等の位相情報を取り出す技術の開発を行い、脳表上の静脈の描出など従来法では不可能であった組織の描出も可能にするなど、さらに多くの結果を得た研究を行えた。 招待講演や教育講演も依頼されるなど、多くの社会的貢献も始まり、これまでの研究成果は発展を期待できるものである。
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