血管新生因子である血小板由来血管内皮細胞増殖因子(PD-ECGF)は、Thymidine Phosphorylase (TP)と同一タンパク質であること、さらにその酵素活性は、腫瘍の血管新生、浸潤、転移と関連があることが明らかとなっている。またTPが、正常組織に比べ様々な固形腫瘍において高レベルで発現することが古くから知られている。 本研究では、PD-ECGFの発現すなわち腫瘍における血管新生をin vivoで選択的にイメージングできる放射性薬剤の開発を目的としている。これまでにC-11標識ホスゲンを標識化剤としてPD-ECGFに親和性かっ高い比放射能を有するC-11標識化合物の合成し、A431細胞移植マウスにおいて腫瘍への経時的な取り込みの増加を認め、半減期が長い核種で標識した化合物が.より有用なイメージング薬剤になりうることが示唆された。 今回、C-11標識化合物よりも非常に高い親和性をもつ放射性ヨウ素標識化合物に関して、細胞実験、腫瘍モデル動物を用いた基礎的検討を実施した。その結果、I-125標識化合物はウェスタンブロット法によりTPの発現が確認されたA431細胞では、放射能集積量が経時的に増加し、腫瘍細胞への取り込みを認めた。さらに非放射性ヨウ素化合物の添加によりその取り込みは阻害された。A431細胞移植マウスにI-125標識化合物を投与したところ腫瘍への高い取り込みが認められ、標的とするTPとの特異的結合に起因している可能性が示唆された。また、I-123による標識合成検討を実施した。 今後、I-123およびI-125標識化合物による小動物用イメージング装置を用いた腫瘍の画像化へ発展させたい。
|