血管新生因子である血小板由来血管内皮細胞増殖因子(PD-ECGF)は、Thymidine Phosphorylase(TP)と同一タンパク質であること、さらにその酵素活性は、腫瘍の血管新生、浸潤、転移と関連があることが明らかとなっている。またTPが、正常組織に比べ様々な固形腫瘍において高レベルで発現することが古くから知られている。 本研究では、PD-ECGFの発現すなわち腫瘍における血管新生をin vivoで選択的にイメージングできる放射性薬剤の開発を目的としている。これまでにPD-ECGFに親和性かつ高い比放射能を有するC-11標識化合物およびI-125標識化合物(IIMU)を合成し、細胞、動物実験においてその有用性を評価した。 今回、昨年度に引き続き、PD-ECGFに親和性を有する放射性ヨウ素標識化合物(IIMU)の有用性に加え安全性の評価についても検討した。1)安全性試験:試験に使用するため非標識の大量製造し、高純度の非放射性IIMUを得た。この非標識IIMUを用い毒性試験を実施し、安全係数が1000倍以上であること確認した。2)安定性の評価:I-125標識IIMUは、ヒト血清において分解は見られず安定であることを確認した。3)体内動態の評価:タンパク結合率は、限外ろ過法による測定の結果38%であった。4)I-123による標識合成検討:I-125標識化と同様の標識合成経路にて合成し、低い放射能スケールでの標識実験において高い放射化学的収率でI-123標識IIMUを得ることができた。動物実験ならびに臨床研究のため放射能のスケールをあげ、合成条件の最適化を目指している。 以上、本研究では、PD-ECGFに親和性を有する放射性標識化合物を得ることが出来た。放射性ヨウ素標識化合物(IIMU)においては、その有効性および安全性を評価することができた。本研究の成果は、新しい血管新生イメージングを可能にするものであり、ヒトへの応用を目指し発展させていきたい。
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