予備実験としてC3Hマウスの大腿部にSCCVII腫瘍を担癌し、腫瘍増殖速度の確認を行った。6×10^6/mlのSCCVIIを注入することで、7-10日後に10mm大に増殖することが分かった。抗がん剤投与量は、過去の同様の実験結果を参考にパクリタキセル15mg/kgおよびカルボプラチン25mg/kgを腹腔内投与することとした。温熱療法は41.5度の恒温槽に専用のマウス固定台を作成し、非麻酔の状態で担癌肢全体を加温し、腫瘍内温度を41.0~41.5度に保てることを確認した。高気圧酸素療法は、動物実験用の高気圧タンクを使用し、通常の臨床実施プロトコールに基づき、100%酸素を用い15分の加圧、2気圧に達した状態で60分、減圧15分を施行することとした。さらに腫瘍組織内の酸素分圧を経時的に測定できるように、高気圧タンク内に酸素分圧測定装置用の電極を増設した。抗癌剤としてカルボプラチン単剤を用いて、温熱療法および高気圧酸素療法による増強効果を検討した。平均腫瘍体積が2倍になるまでの日数は、カルボプラチン・温熱・高気圧群は12.4日、カルボプラチン・温熱群8.3日、カルボプラチン・高気圧群5.8日、カルボプラチン単独群5.5日、無治療群4.9日であり、カルボプラチン・温熱・高気圧群において最も腫瘍成長の遅延が確認された。また、腫瘍内酸素分圧の測定を経時的に施行し、温熱療法および高気圧酸素療法の施行時に高い酸素分圧が維持されている点を確認した。さらに、各治療法の施行順序を変化させ、最適な治療スケジュールを検討した結果、カルボプラチン投与→温熱療法→高気圧酸素療法の治療順序で高い腫瘍成長の遅延が得られる傾向がある点を確認した。結論として温熱療法と高気圧酸素療法の両者を併用することでカルボプラチンの腫瘍成長抑制効果がさらに増強されることが示された。
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