X線撮影は、誰もが年1回の健康診断で受診するように、人の健康維持のために重要な医療機器である。しかし、放射線を用いるために、健常者への年間利用回数が制限されている。より低被爆量でも撮影可能なX線撮影機があれば、医師は複数の角度からの撮影像から、総合的に診断することができるなど、より的確かつ安全な診察が可能になる。そこで本研究では、放射線からの信号を大幅に増幅することで、少量のX線でも検出することができるようになる、GEM(ガス電子増幅器)と呼ばれるデバイスを用い、低被爆X線撮影装置を開発する。特に、これまでの手法では難しかった、位置分解能の高精度化と、イメージング面積の大型化の両立を、実現するための基礎技術の確立を行う。 開発初年度である平成20年度には、2次元ストリップ抵抗陽極基板と呼ばれる、読み出しチャンネル数は最小限ながら、ストリップ・ピッチよりも細かい分解能を得られる、電荷読み出し基板の設計のため、電磁界シミュレータMAXWELLを用いて、収集された電荷が抵抗陽極の中をどのような分布を持って広がっていくか、シミュレーション検証を行った。その結果、抵抗陽極として適切な伝導率および厚さについて、知見を得ることができた。 一方、2次元ストリップ抵抗陽極基板で収集された電荷をデジタル値に変換するため、AD変換器やデータ補正デジタル部などを含むASICの設計開発を行い、実際に試作を行うための準備を整えた。
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