X線撮影は、誰もが年1回の健康診断で受診するよに、人の健康維持のために重要な医療機器である。しかし、放射線を用いるために、健常者への年間利用回数が制限されている。より低被爆量でも撮影可能なX線撮影機があれば、医師は複数の角度からの撮影像から、総合的に診断することができるなど、より的確かつ安全な診察が可能になる。そこで本研究では、放射線からの信号を大幅に増幅することで、少量のX線でも検出することができるようになる、GEM(ガス電子増幅器)と呼ばれるデバイスを用い、低被爆X線撮影装置を開発する。特に、これまでの手法では難しかった、位置分解能の高精度化と、イメージング面積の大型化の両立を、実現するための基礎技術の確立を行う。 開発2年目となる平成21年度には、測定器から収集された電荷をデジタル値に変換するための、AD変換器やTD変換器などを含むASICの試作を行い、測定評価を行った。評価の結果、ノイズがやや多いなどの改善すべき点は見られたが、概ね良好な動作が示された。そこで、実際の測定器データを読み出すため、同ASICを用いたフロントエンド基板の設計・製作を行った。一方、読み出しデータをPCに送信するためのSiTCPと呼ばれる仕組みについても、動作確認を行った。また、X線から変換されGEMで増幅された電子を受け取る2次元ストリップ基板の試作を行った。次年度にはこれらとGEMによる検出チャンバーとを組み合わせ、X線イメージング実験を実施する予定である。
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