X線撮影は、誰もが年1回の健康診断で受診するように、人の健康維持のために重要な医療機器である。しかし、放射線を用いるために、健常者への年間利用回数が制限されている。より低被爆量でも撮影可能なX線撮影機があれば、医師は複数の角度からの撮影像から、総合的に診断することができるなど、より的確かつ安全な診察が可能になる。そこで本研究では、放射線からの信号を大幅に増幅することで、少量のX線でも検出することができるようになる、GEM(ガス電子増幅器)と呼ばれるデバイスを用い、低被爆X線撮影装置を開発する。特に、これまでの手法では難しかった、位置分解能の高精度化と、イメージング面積の大型化の両立を、実現するための基礎技術の確立を行う。 開発3年目となる平成22年度には、昨年度に製作したエックス線データ取得用のフロントエンド基板に関して、ボード上のFPGAプログラミング開発、および、PCからボードを制御するためのPC側のソフトウェアプログラム開発を行なった。これらは、検出ストリップからの電子信号による電荷および時間情報を基に、エックス線粒子の入射点を適切に再構成し、その集合データからイメージングを得るためのものである。現時点では初期バージョンの簡易プログラムであるが、テストパルスからのデータ収集実験を行なった。次年度にはこれら読み出し回路系をGEMによる検出チャンバーに組込み、X線イメージング実験を実施する予定である。
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