GEMを用いた超低線量エックス線撮影装置の開発のため、電荷・時間同時測定LSIによる読み出し回路を開発した。特に23年度は、LANを用いて簡易に読み出せるSiTCPというシステムによるデータ読み出し系を、昨年度までの100Mbpsから更に高速な1Gbpsに改良した。また、PC側での読み出しソフトウェアを高度化してグラフィックユーザインタフェースを備えたものとした。 次に、GEMおよび光電コンバータを組込んだ検出器チェンバーと、エックス線発生装置を用いて、エックス線イメージング実験を行った。実験にあたっては、装置や検出器の使用に関して、東京大学、東京文化財研究所、サイエナジー(株)の協力を得た。ここではまず、一般的なエックス線撮影でのエックス線エネルギーに近い、管電圧50~100kVでのエックス線領域において、2mm厚の鉛板に約15mm角の正方形の穴を開けた被写体を用いて撮影実験を行い、パターンが明瞭に撮影されることを確認した。検出器のイメージング面積は200mm角であるが、当実験では初期実験として最小限の読み出し回路を搭載して行ったため、得られたイメージング像は100mm角である。 さらに、本開発はCTスキャン装置にも応用が可能であると考えられるため、より高いエネルギーとして管電圧300kVでのエックス線を用いた撮影も行った。特別に試作した光電コンバータが功を奏して、このような高いエネルギーのエックス線も十分に検出することができ、現時点では5mm厚の鉛のエッジがはっきりと識別できることが確認された。
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