異物排出システムは組織に侵入する異物や代謝物を積極的に除去することによって、有害な物質から保護している。前年度、脳内の排出トランスポータmultidrug resistance-associated proteinl(MRP1)機能を非侵襲的定量測定するために設計した6-bromo-7-[^<11>C]methylpurine([^<11>C]1)は静脈内投与後、速やかに脳内に移行しMRPIの基質であるグルタチオン抱合体([^<11>C]2)に変換されることを確認した。血液脳関門上にはMRP1に加えて、MRP2、P糖タンパク質(Pgp)、乳癌耐性タンパク質(BCRP)といったトランスポータが異物排出に重要な役割を果たしている。そこで、本年度は[^<11>C]2の排出に対するこれらのトランスポータの関与を検証した。脳内で変換された[^<11>C]2は、Mrp1ノックアウト(KO)マウスでは大部分脳内に保持されたのに対して(排出速度:0.15h^<-1>)、野生型、Mrp2KOおよびPgp/BcrpダブルKOマウスにおいては排出速度1.4h^<-1>で速やかに脳から排出された。これらのことは脳内で生成した[^<11>C]2は特異的にMRP1によって脳から排出されていることを示す。以上、[^<11>C]1は脳内MRP1の機能を非侵襲的かつ定量的に測定するためのPETプローブとして有用であると考えられる。また、グルタチオン抱合には種差があるため、ヒトやサルなど様々な種においてMRP1機能を測定するためには[^<11>C]1のGSHに対する反応性を調節する必要がある。そこで、種々のプリン誘導体を設計し、マウス、ラットおよびサルの大脳皮質ホモジネートにおけるGSHとの反応性を評価した。その結果、広範な反応性を有するプリン誘導体を得ることに成功し、様々な種におけるMRP1機能の定量測定の可能性が示唆された。
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