研究課題
野生型培養細胞にCHOならびにV79、NHEJ修復関連遺伝子変異株にxrs6を選び、大気下ならびに低酸素下(酸素分圧 : <0.24mmHg)で200kVp X線照射を行い、コロニー形成法を用いて細胞生存率を算出し、感受性の評価を行った。それに加え、放射線のOHラジカル由来の間接作用による細胞致死への寄与率をラジカル捕捉剤であるDMSOとX線防護効果の関係から数字的解析法を用いて導き出した。CHOならびにV79細胞での酸素増感比(OER)は2.8-3.0であった。DSB修復欠損細胞であるxrs6細胞のOERは2.7であった。この結果より、DSB修復機構の1つであるNHEJの有無とOERの関連性は薄いことが示唆された。また、CHO細胞の間接作用による細胞致死寄与率は77%であり、既に報告されている値とほぼ一致した。しかし、低酸素下での細胞致死寄与率は60%であり、過去の報告とは異なることが判明した。さらに、低酸素下ではDMSOによるOHラジカル捕捉効果は大気下よりも小さいことが明らかになった。これらの解釈として、本研究では実験結果を基にしたラジカル濃度を無限大まで外挿することで間接作用の寄与率を算出した。これが本研究の重要な点であり、一定濃度での寄与率よりもより正確な寄与率を算出していると考えられる。さら低酸素下における細胞毒性の少ないDMSO濃度での間接作用の寄与率は算出が難しく、本実験結果とは異なるものと考えられる。よって本研究で用いた細胞致死に対する間接作用の寄与率算出方法は、過去の報告よりもより正確な値を導き出し、特に報告例が少ない低酸素環境下での貴重な知見を与えたものと考える。現在、xrs6細胞での細胞致死に対する間接作用の寄与率の算出を行っており、ほとんど報告の無い、DSB修復欠損細胞における間接作用の影響を知り得る研究になることが期待できる。
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Radiation Research 171
ページ: 212-218