研究課題
昨年度に引き続き、HR修復関連遺伝子変異株に51D1細胞を選び、大気下ならびに低酸素下(酸素分圧:<0.24mmHg)で200KvpX線照射を行い、コロニー形成法を用いて細胞生存率を算出し、感受性の評価を行さた。それに加え、NHEJ修復関連遺伝子変異株であるxrs6細胞において、放射線のOHラジカル由来の間接作用による細胞致死への寄与率をラジカル捕捉剤であるDMSOを用いて、X線防護効果の関係から数学的解析法を用いて導き出した。51D1細胞の酸素増感比(OER)は2.5±0.1であった。CHO細胞やxrs6細胞のOERは2.7-2.8であったにとから、DSB修復機構の1つであるHRが酸素による増感効果(酸素効果)と何らかの関係があることが示唆された。また、大気下でのxrs6細胞の間接作用による細胞致死寄与率は49%であり、低酸素下での細胞致死寄与率は31%であった。この値は野生型CHO細胞に比べ、ともに低い値となり、xrs6細胞のX線による細胞致死機構は直接作用が主作用であることが示された。DSB修復欠損細胞の細胞致死機構を放射線作用別に報告した例はほとんどないため、放射線生物学的に新しい知見をもたらしたと言える。また低酸素下での間接作用による細胞致死効果も明らかになり、低酸素下による細胞致死機構に間接作用の寄与が小さいことも明らかになった。現在、51D1細胞での細胞致死に対なる間接作用の寄与率の算出を行っており、ほとんど報告の無い、DSB修復欠損細胞における間接作用の影響を知り得る研究になることが期待でき、放射線の作用別による細胞致死機構とDSB修復機構の関係を明らかにすることで、放射線によって生じた致死損傷の化学的・生物学的特徴を明らかにすることを狙う。
すべて 2009 その他
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件) 備考 (3件)
Radiation Physics and Chemistry 78
ページ: 1175-1178