研究課題
本研究の最終年度ではHR修復関連遺伝子変異株(5IDI細胞)での、大気下ならびに低酸素下(酸素分圧:<0.24mmHg)環境における200 kVp X線照射誘発OHラジカル由来の間接作用による細胞致死への寄与率をラジカル捕捉剤であるDMSOを用いて、X線防護効果の関係から数学的解析法を用いて導き出した。大気下でのxrs6細胞の間接作用による細胞致死寄与率は約80%であり、低酸素下での細胞致死寄与率は60%であった。この値は野生型CHO細胞やAA8細胞の大気下および低酸素下での間接作用による細胞致死率とほぼ同じ割合であることがわかった(大気下では約80-90%、低酸素以下では約50%が間接作用による細胞致死)。昨年度までのデータをまとめると、野生株やHR修復関連遺伝子変異株のX線による細胞致死はOHラジカルによる間接作用が主要因であることが判明し、NHEJ修復関連遺伝子変異株では細胞致死の半分もしくはそれ以上が直接作用に因ることが明らかになった。このことはNHEJ機構がX線の直接作用誘発DSBに対する修復機構として非常に重要であることを示唆している。しかしHR機構はHR修復関連遺伝子変異株と野生株のX線による細胞致死への放射線作用がほぼ同じ割合であることから、HR機構と放射線作用の特異的な関係は無いように思える。本研究ではDSB修復欠損細胞におけるX線の間接作用・直接作用の細胞致死効果を明らかにしたことで、放射線の作用別による細胞致死機構とDSB修復機構の関係を明らかにすることができた。本研究は放射線によって生じた致死損傷の化学的・生物学的特徴の一端を明らかにし、放射線による細胞致死機構やDSB修復欠損株の放射線感受性の違いを、放射線化学ならびに放射線生物学の新たな観点から評価した、ユニークな研究である。
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