脳死肝移植においては、脳死が確認され、ドナー肝が採取されたのち冷保存(4℃のUW液にて24時間保存可能)を行い、レシピエントの待つ場所まで運んで移植手術が行われている。しかしながら、遠隔地や準備時間によるタイムロスなどでは保存時間が長くなってしまい、実際16時間を超える保存時間の場合には、移植再灌流後に臨床では約5%にprimary non-function(PNF)を生じる。 過冷却装置(PROKEPT^<[○!R>])を用いて氷点下で肝臓グラフトをUW保存液で凍らせずに保存することで従来の4℃保存よりも、より長く品質を保って保存できないかを検証することを目的に研究を開始した。 まずは、PROKEPT^<[○!R]>による過冷却保存を安定して行えるかどうかの検討を行った。-15℃〜-5℃では保存液が凍ってしまった。-4℃から-5℃では凍ってしまうときがあったが、-4℃では安定して保存液が凍らずに保存可能であった。そこで、豚の肝臓移植実験を行った際に肝臓グラフト保存を従来通りに4℃で行ったが、1cm角正方形の肝臓組織を採取して約10mlのUW液にそれぞれ(n=3ずつ)4℃と-4℃とで15hr保存した。そして、保存後のUW液のAST値を測定したところ、有意差はなかったが、-4℃で保存した群でAST値が低い傾向(120±23vs 170±33IU/L)が認められた。また、保存後の肝臓組織検索としてPAS染色を行ったが、-4℃で保存した群において有意にグリコーゲンの染色性が高かったことから組織の基礎代謝が抑えられていた可能性が示唆された。 これらの結果から-4℃での保存はPNFの頻度を減少させる可能性があり、臨床的意義としてその効果は計り知れないものがあると思われた。今後はこの結果を受けて、保存後の臓器を実際に移植することで再灌琉後の微小循環不全や肝細胞のviabilityなどの評価を行っていく計画である。
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