研究概要 |
下肢の阻血により安静時痛や壊死、潰瘍形成という症状を示す重症虚血肢の虚血の程度の評価や潰瘍形成症例における創傷治癒見込みの評価法の確立のために、重症虚血肢の虚血部位における組織代謝に関する知見を蓄積することが必要であると考えられる。 今回ラジオメーター社の経皮ガス分圧測定装置TCM4を用いることにより無侵襲的に測定可能な経皮的酸素分圧(tcPO_2)及び経皮的二酸化炭素分圧(tcPCO_2)測定をもとに局所の組織代謝を検討する方針とした。ただし、経皮的酸素分圧(tcPO_2)及び経皮的二酸化炭素分圧(tcPCO_2)測定は、正常人においては吸気内の酸素分圧の影響を受けることが知られており、経皮的二酸化炭素分圧(tcPCO_2)についても吸気酸素分圧やtcPO_2の影響、呼吸機能の影響を受けることが考えられている。まずは指標の信頼性を確立する為に測定条件の適切な設定が必要であると考えられた。 まず本年は基礎データの収集を行った。組織代謝の評価のために標準化のために下肢虚血を認めないと考えられる成人に対して検査法の検討を行った。特に既往のない成人男女5名(平均30.4歳、26歳-35歳)に対し経皮的酸素分圧(tcPO_2)及び経皮的二酸化炭素分圧(tcPCO_2)測定を施行した。酸素非吸入下、18-25度の室内で、10分以上臥位にて安静とした後測定した。測定のためのプローベを足部では第1中足骨の直上または第1/2中足骨間の比較的軟な部位に貼付し測定値に差があるかどうかを検討したところ、結果としては部位による差を認めなかった。再現性も良好であった。このため、今後の検討では上記条件で測定し、壊死を伴う肢に対しては壊死部の近傍にて測定することとした。 重症虚血肢のおける測定・組織代謝の評価,及び手術施行後の肢予後・創傷治癒結果との関連という臨床データと合わせた検討は今後続いて施行されるべきものとした。
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